海辺のふかふか

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自分のイデオロギーくらい語れるようになりたいよ

大田比路『政治的に無価値なキミたちへ』を読んで、考えたことを書きます。この本は早稲田大学の政治入門講義を書籍化した本です。学生の目を政治に向けさせることを目的とした本なので、とっても読みやすい。

12章「国民」に「自分と同じ投票行動をするよう大勢の他者に訴えかける行動を伴わなければ、自分の政治的意思は政府に伝わらない*1」と書いてありました。頑張らなきゃと思いました。というか、文句だけ言いながら死んでいくのはやっぱり嫌だなって思った。たとえ生きているうちに叶わなくても、より良い明日のために出来ることをしている実感があるなら、とりあえずはそれでいいかな。

筆者はイデオロギーを「『世界はこうあるべき』という抽象的な思い」*2と定義する。そしてイデオロギーには正解も不正解もなく、誰もが各々のイデオロギーを持ち、そのせめぎ合いで世界は作られるのだと説く*3。私はつい「正しい」側に立ちたいと思ってしまい、その「正しさ」を論証できない不安から自分の考えを語れないことが多い。しかしイデオロギーに関しては、正しくないかもしれなくても、信念を貫くべきなのだと思った。正解がないということは、間違いもまたないのだから。

この本を読んで、自分の政治的イデオロギーくらい語れるようになりたいなって思いました。でもどうやって??全然上手くできないよ。大学とか行ったらいいのかな?と思ってちょっと調べてみたけど、難しー……。どこで自分の知りたいことが学べるのか調べるのがまず難しい。でも語れるようになるまで黙っているわけにもいかないと思うので、このぐちゃぐちゃの感想文を書いてみました。

ひとつ思うのは、イデオロギーを持って語ることが、イデオロギーを語ることになり得るのではないか、ということです。村上春樹の『雑文集』に、カキフライについて語ることは自分とカキフライの関係について語ることであって、つまりは自分について語ることになる、というような話があります。これと同じで、「これは許せない」「これだけは守るべき」みたいな思想を抱えて表現をすることで、それ自体を表現しなくてもある程度滲み出るのではないか、と思います。微々たるものかもしれないけれど、無くもないはず。例えば「お金をいっぱい稼いだ人が偉い」という思想を持つ人たちがあっちこっちでいろんな話をしているから、お金をいっぱい稼いだ人が偉いという価値観は強化され続けているのではないでしょうか。みんなで「お金をいっぱい稼ぎましょう!」と声を揃えて言っているわけではなくてもね。

だから私は書く。Living well is the best revenge. 微笑みながら生きてやるのが、このクソみたいな世界へのささやかな抵抗になると思うので。

参考文献:大田比路 (2023). 『政治的に無価値なキミたちへ』. イースト・プレス

 

*1:大田比路『政治的に無価値なキミたちへ』p. 294.

*2:同p. 13.

*3:同p. 38.