最近読んだ3冊から、改めて労働について考えた。結論は出ていない。
『実力も運のうち 能力主義は正義か?』でマイケル・サンデルは、能力主義の専制を打破し労働に尊厳を取り戻そうと呼びかける*1。これは社会に貢献する仕事こそ尊いという発想に基づいている。それに対して『政治的に無価値なキミたちへ』で大田比路は、主に若者を政治的主体として目覚めさせる目的から、労働とは本来嫌なものであり再考されるべきシステムだとしている*2。『経済成長がなければ私たちは豊かになれないのだろうか』におけるC. ダグラス・スミスの立場はどちらかといえば大田に近く、経済成長イデオロギーが過剰な労働を人々に強いていると指摘する*3。
大田とスミスにならって「労働は本来嫌なもの」「労働に支配された人生なんてしょうもない」と考えてみよう。賢く効率よく稼いで楽をして生きようぜ、やりたいことやらないヤツはバカだぜ。……それはそれでしょうもないな?オモコロチャンネルで永田さんも言っていたが「楽して賢く」が偉いか?人生ハックしてさ。それよりも、いい人間になることや、必要とされる仕事をすることの方が尊いんじゃないか。
そうか。「労働=人の役に立つ=尊い」という、サンデルの言うような価値観が自分の中にあるんだな。労働とそれを押し付ける経済成長イデオロギーに空虚さを感じつつも、そういう社会にあって労働から逃れて生きる人生もしょうもないと感じてしまうのか。それなら長い労働時間の中でちょっとでも役に立つところとか、やりがい的なものとか楽しさとか見出して生きていくしかないのかな。
労働について考えるのって自分が何に価値を見出すか、つまりは生きる目的・意味・意義を考えていくことになるようだ。幸せになることが一番大事だと思っていたけれど、自分が幸せでも他に不幸な人がいるのは嫌だなと思うから、自分の幸せが一番大事というわけでもないのかも。でもまずは自分が大事で……結論はまだ出ない。
参考文献