海辺のふかふか

読みたいものを書くブログ

モリス・バーマン『神経症的な美しさ』を読んで

年末にNHKで放送した番組「思考のオルタナティブ 無と向き合う世界観 モリス・バーマン」で紹介された『神経症的な美しさ』という本を読んでみました。

扱う内容に馴染みがなくて飛ばした章もありますが、備忘のため感想など書いてみようと思います。誤読もあるかもしれませんが、こんな本を読んでこう捉えた、という記録として読んでいただければ幸いです……!

どういう話か

世界を覆うアメリカ的資本主義の限界と、日本がその突破口となる可能性を提示する1冊。黒船来航や敗戦の歴史を経て、日本は急速にアメリカ式の資本主義を受容した。しかし発展を至上とする資本主義は、精神的なものを重視する日本の伝統とは相容れないため、日本社会は大きな葛藤を抱えてきた。発展の限界ひいては資本主義の限界が見えてきた今こそ、ミニマルさを尊ぶ日本の伝統的な精神が、ポスト資本主義のモデルとなるかもしれない。

感想

年末の放送ではオタク文化とかオウム真理教の話もしていて、その辺りに興味を持ったのだけれど、そこまで本筋ではないみたいだった。でも資本主義へのオルタナティブが必要、というメッセージは共通していたと思う。年末の放送では、資本主義という物語に意義を感じられなくなった人々が、別の物語に生きる意味を求めた悪しき例がオウム真理教で、より害のない例がオタク文化だという話をしていた。いつの時代のどういうオタクの話をしているのかは少し気になったが、別の物語が必要だという発想には共感できた。カート・ヴォネガットの小説『猫のゆりかご』に「白い嘘」という言葉が出てくる(らしい。途中までしか読んでないけどいつか読みたい)。意味は、心の支えにするための、罪のない嘘。現実なんて切り取り方次第で変わるから、そういう信じられる物語は必要だと思う。私は資本主義が発する発展のメッセージ、成長の神話を信じられない。どんなに多くの人がそれを信じていても。

全体的に大学入試の現代文くらいエネルギー使って読まなければいけない感じで、それが結構分厚いので、まあ大変。あと日本史とか日本哲学の話も出てきて、その辺りあまり知識がなかったのもあってやや難しく感じた。著者はアメリカ人なので、日本についての見解に「そうか?」と思うことはちょいちょいあったものの、全体的なメッセージには概ね共感できた。年末の放送で見たバーマンさんの顔を思い浮かべながら、頑張って読みました。